妙法蓮華経 安楽行品 第十四
文殊師利 是の法華経は 無量の国の中に於て 乃至 名字をも聞くことを 得べからず
何に況んや 見ることを得 受持し 読誦せんをや
文殊師利 譬えば 強力の 転輪聖王の 威勢を以て 諸国を降伏せんと欲せんに 而も 諸の小王 其の 命に順わざらん
時に 転輪王 種種の兵を起して 往いて討伐するに
王 兵衆の戦うに 功ある者を見て 即ち 大に歓喜し
功に随って 賞賜し 或は 田宅 聚落 城邑を与え 或は 衣服 厳身の具を与え 或は 種種の珍宝 金 銀 瑠璃 シャコ 碼碯 珊瑚 琥珀 象馬 車乗 奴婢 人民を与う
唯 髻中の明珠のみ 以て 之を与えず
所以は何ん 独 王の頂上に 此の一つの珠あり
若し 以て 之を与えば 王の 諸の眷属 必ず 大に驚き 怪まんが如く
文殊師利 如来も 亦復 是の如し
禅定 智慧の力を以て 法の国土を得て 三界に王たり 而るを 諸の魔王 肯て順伏せず
如来の 賢聖の諸将 之と共に戦うに 其の功ある者には 心 亦 歓喜して 四衆の中に於て 為に 諸経を説いて 其の心をして 悦ばしめ 賜うに 禅定 解脱 無漏根 力の諸法の財を以てし
又復 涅槃の城を賜与して 滅度を得たりと言って 其の心を引導して 皆 歓喜せしむ 而も 為に 是の法華経を説かず
文殊師利 転輪王の 諸の兵衆の 大功ある者を見ては 心 甚だ歓喜して 此の 難信の珠の 久しく 髻中に在って 妄りに人に与えざるを以て 今 之を与えんが如く 如来も 亦復 是の如し
三界の中に於て 大法王たり 法を以て 一切衆生を教化す
賢聖の軍の 五陰魔 煩悩魔 死魔と共に 戦うに 大功勲有って 三毒を滅し 三界を出でて 魔網を破するを見ては 爾の時に如来 亦 大に歓喜して
此の法華経の 能く 衆生をして 一切智に至らしめ 一切世間に 怨多くして 信じ難く 先に 未だ説かざる所なるを 而も 今 之を説く
文殊師利 此の法華経は 是れ 諸の如来の 第一の説 諸説の中に於て 最も 為れ 甚深なり
末後に 賜与すること 彼の 強力の王の 久しく護れる明珠を 今 乃ち 之を 与うるが如し
文殊師利 此の法華経は 諸仏如来の秘密の蔵なり 諸経の中に於て 最も其の上に在り 長夜に守護して 妄りに 宣説せざるを 始めて 今日に於て 乃ち 汝等がために 而も之を敷演す
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