妙法蓮華経 化城諭品 第七
是の 諸の沙弥等
仏の禅より 未だ 出でたまわざるを知って
無量億の衆の為に 仏の無上慧を説く
各各に 法座に坐して 是の大乗経を説き
仏 宴寂の後に於て 宣揚して 法化を助く
一一の沙弥等の 度する所の 諸の衆生
六百万億恒河沙等の衆あり
彼の仏の 滅度の後 是の 諸の聞法の者
在在諸仏の土に 常に師と倶に生ず
是の 十六の沙弥 具足して仏道を行じて
今 現に 十方に在って 各 正覚を成ずることを 得たまえり
爾の時の 聞法の者 各 諸仏の所にあり
其の声聞に住することあるは
漸く 教うるに 仏道を以てす
我 十六の数にあって 曾て 亦 汝が為に説きき
是の故に 方便を以て 汝を引いて 仏慧に趣かしむ
是の 本因縁を以て 今 法華経を説いて
汝をして 仏道に入らしむ 慎んで驚懼を懐くこと勿れ
譬えば 険悪道の 迥かに絶えて 毒獣多く
又復 水草なく 人の怖畏する所の 処あらん
無数千万の衆 此の 険道を過ぎんと欲す
其の路 甚だ曠遠にして 五百由旬を経
時に 一りの導師あり 強識にして智慧あり
明了にして 心決定せり 険きにあって 衆難を済う
衆人 皆 疲倦して 導師に白して言さく
我等 今 頓乏せり 此れより退き 還らんと欲す
導師 是の念を作さく 此の輩 甚だ愍むべし
如何ぞ 退き還って 大珍宝を失わんと欲する
尋いで 時に 方便を思わく 当に 神通力を設くべしと
大城郭を化作して 諸の舎宅を荘厳す
周ソウして 園林 渠流 及び 浴池
重門 高楼閣あって 男女 皆 充満せり
即ち 是の化を作し已って
衆を慰めて言わく 懼るること勿れ
汝等 此の城に入りなば 各 所楽に随うべし
諸人 既に城に入って 心 皆 大に歓喜し
皆 安穏の想を生じて
自ら已に 度することを得つと謂えり
導師 息み已んぬと知って 衆を集めて告げて
汝等 当に前進むべし 此れは 是れ 化城ならくのみ
我 汝が疲極して 中路に退き 還らんと欲するを見る
故に 方便力を以て 権に 此の城を化作せり
汝 今 勤め精進して
当に 共に 宝所に至るべしと 言わんが如く
我も 亦復 是の如し これ 一切の導師なり
諸の道を求むる者 中路にして 懈廃し
生死 煩悩の 諸の険道を度すること 能わざるを見る
故に 方便力を以て 息めんが為に 涅槃を説いて
汝等は 苦 滅し 所作 皆 已に 弁ぜりという
既に涅槃に到り 皆 阿羅漢を得たりと知って
爾して 乃し大衆を集めて 為に真実の法を説く
諸仏は方便力をもって 分別して 三乗と説きたもう
唯 一仏乗のみあり 息処の故に 二を説く
今 汝が為に実を説く 汝が所得は 滅に非ず
仏の 一切智の為に 当に 大精進を発すべし
汝 一切智 十力等の 仏法を証し
三十二相を具しなば 乃ち 是れ 真実の滅ならん
諸仏の導師は 息めんが為に 涅槃を説きたもう
既に 是れ 息み已んぬと知れば 仏慧に 引入したもう
妙法蓮華経巻第三
法華経 訓読 朗読