妙法蓮華経 化城諭品 第七

 

爾の時に 大通智勝如来 十方の 諸の梵天王 及び 十六王子の請を受けて

即時に 三たび 十二行の法輪を転じたもう 若しは 沙門 婆羅門 若しは 天 魔 梵 及び 余の世間の転ずること 能わざる所なり 謂わく 是れ苦 是れ苦の集 是れ苦の滅 是れ苦滅の道なり 及び 広く十二因縁の法を 説きたもう

無明は 行に縁たり
行は 識に縁たり
識は 名色に縁たり
名色は 六入に縁たり
六入は 触に縁たり
触は 受に縁たり
受は 愛に縁たり
愛は 取に縁たり
取は 有に縁たり
有は 生に縁たり
生は 老死 憂悲 苦悩に縁たり

無明滅すれば 則ち行滅す
行滅すれば 則ち識滅す
識滅すれば 則ち名色滅す
名色滅すれば 則ち六入滅す
六入滅すれば 則ち触滅す
触滅すれば 則ち受滅す
受滅すれば 則ち愛滅す
愛滅すれば 則ち取滅す
取滅すれば 則ち有滅す
有滅すれば  則ち生滅す
生滅すれば 則ち老死 憂悲 苦悩滅す

仏 天 人 大衆の中に於て 是の法を説きたまいし時 六百万億那由他の人 一切の法を 受けざるを以ての故に 而も 諸漏に於て 心 解脱を得 皆 深妙の禅定 三明 六通を得 八解脱を具しぬ 第二 第三 第四の説法の時も 千万億恒河沙那由他等の衆生 亦 一切の法を 受けざるを以ての故に 而も 諸漏に於て 心 解脱を得 是れより已後 諸の声聞衆 無量無辺にして 称数すべからず

爾の時に 十六王子 皆 童子を以て出家して 沙弥と為りぬ 諸根通利にして 智慧明了なり 已に曾て 百千万億の諸仏を供養し 浄く 梵行を修して 阿耨多羅三藐三菩提を求む 倶に 仏に白して言さく 世尊 是の 諸の 無量千万億の 大徳の声聞は 皆 已に成就しぬ 世尊 亦 当に 我等が為に 阿耨多羅三藐三菩提の 法を説きたもうべし 我等 聞き已って 皆 共に 修学せん 世尊 我等 如来の知見を志願す 深心の所念は 仏 自ら証知したまわん

爾の時に 転輪聖王の 所將の 衆中八万億の人 十六王子の出家を見て 亦 出家を求む 王 即ち聴許しき

爾の時に 彼の仏 沙弥の請を受けて 二万劫を過ぎ已って 乃ち 四衆の中に於て 是の 大乗経の 妙法蓮華 教菩薩法 仏所護念と名くるを 説きたもう 是の経を説き已って 十六の沙弥 阿耨多羅三藐三菩提の為の故に 皆 共に受持し 諷誦 通利しき

是の経を説きたまいし時 十六の菩薩沙弥 皆 悉く信受す 声聞衆の中にも 亦 信解するあり 其の 余の 衆生の 千万億種なるは 皆 疑惑を生じき

仏 是の経を説きたもうこと 八千劫に於て 未だ 曾て 休廃したまわず

此の経を説き已って 即ち 静室に入って 禅定に住したもうこと 八万四千劫

 

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