妙法蓮華経 化城諭品 第七

 

時に 諸の梵天王 即ち 仏前に於て 一心に声を同じうして
偈を以て頌して曰さく

善哉 諸仏 救世の聖尊を見たてまつるに
能く三界の獄より 諸の衆生を勉出したもう
普智天人尊 群萌類を愍哀し
能く 甘露の門を開いて 広く 一切を度したもう
昔の無量劫に於て 空しく過ぎて 仏いますことなし
世尊 未だ 出でたまわざりし時は 十方 常に闇瞑にして
三悪道 増長し 阿修羅 亦 盛んなり
諸天衆 転た減じ 死して 多く 悪道に堕つ
仏に従いたてまつりて 法を聞かずして
常に 不善の事を行じ
色力 及び 智慧 斯れ等 皆 減少す
罪業の因縁の故に 楽 及び 楽の想を失い
邪見の法に住して 善の儀則を識らず
仏の所化を蒙らずして 常に 悪道に堕つ
仏は世間の眼と為って 久遠に 時に 乃し 出でたまえり
諸の衆生を 哀愍したもう故に 世間に現じ
超出して 正覚を成じたまえり 我等 甚だ 欣慶す
及び 余の 一切の衆も 喜んで未曾有なりと歎ず
我等が 諸の宮殿 光を蒙るが故に 厳飾せり
今 以て 世尊に奉る 唯 哀みを垂れて納受したまえ
願わくは 此の功徳を以て 普く一切に及ぼし
我等と衆生と 皆 共に 仏道を成ぜん

爾の時に 五百万億の諸の梵天王 偈をもって 仏を讃め已って 各 仏に白して言さく 唯願わくは世尊 法輪を転じたまえ 安穏ならしむる所多く 度脱したもう所多からん

時に 諸の梵天王 而も 偈を説いて言さく

世尊 法輪を転じ 甘露の法鼓を撃って
苦悩の衆生を度し 涅槃の道を開示したまえ
唯願わくは 我が請を受けて 大微妙の音を以て
哀愍して 無量劫に 習える法を敷演したまえ

 

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