妙法蓮華経 信解品 第四

 

富める長者の 子の 志 劣なるを知って
方便力を以て 其の心を柔伏して
然して後に 乃し 一切の財宝を付するが如く
仏も亦 是の如し 希有の事を現じたもう
小を楽う者なりと知しめして 方便力を以て
其の心を調伏して 乃し 大智を 教えたもう
我等 今日 未曾有なることを得たり
先の所望に 非るを 而も 今 自ら得ること
彼の窮子の 無量の宝を得るが如し
世尊 我今 道を得 果を得
無漏の法に於て 清浄の眼を得たり
我等 長夜に 仏の浄戒を持って
始めて今日に於て 其の果報を得
法王の法の中に 久しく梵行を修して
今 無漏 無上の大果を得
我等 今者 真に是れ声聞なり
仏道の声を以て 一切をして聞かしむべし
我等 今者 真に 阿羅漢なり
諸の世間 天 人 魔 梵に於て
普く其の中に於て 供養を受くべし

世尊は 大恩まします 希有の事を以て
憐愍教化して 我等を利益したもう
無量億劫にも 誰か能く 報ずる者あらん
手足をもって 供給し 頭頂をもって 礼敬し
一切をもって 供養すとも  皆 報ずること能わじ
若しは以て頂戴し 両肩に荷負して
恒沙劫に於て 心を尽くして恭敬し
又 美膳 無量の宝衣
及び 諸の臥具 種々の湯薬を以てし
牛頭栴檀 及び 諸の珍宝
以て塔廟を起て 宝衣を地に布き
斯の如き等の事 以用て供養すること
恒沙劫に於てすとも 亦 報ずること能わじ
諸仏は 希有にして 無量無辺
不可思議の 大神通力まします
無漏 無為にして 諸法の王なり
能く 下劣の為に 斯の事を忍びたもう
取相の凡夫に 宜しきに随って 為に説きたもう
諸仏は法に於て 最自在を得たまえり
諸の衆生の 種々の欲楽
及び 其の志力を知しめして 堪任する所に随って
無量の諭を以て 而も 為に法を説きたもう
諸の衆生の 宿世の善根に随い
又 成熟 未成熟の者を知しめし
種々に 籌量し 分別し 知しめし已って
一乗の道に於て 宜しきに随って 三と 説きたもう

妙法蓮華経 巻第二

 

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