妙法蓮華経 信解品 第四

 

即ち 使者に勅して 追い 捉え 将いて来らしむ
窮子 驚き 喚ばい 迷悶して 地に躄る
是の人 我を執う 必ず 当に 殺さるべし
何ぞ 衣食を用って 我をして此に 至らしむる
長者 子の 愚痴狭劣にして
我が言を信ぜず 是れ父なりと 信ぜざるを知って

即ち 方便を以て 更に余人の
眇目 ザ陋にして 威徳なき者を遣わす
汝 之に語って 云うべし 当に 相雇うて
諸の糞穢を除わしむべし 倍して 汝に価を与えんと
窮子 之を聞いて 歓喜し 随い来って
為に 糞穢を除い 諸の房舎を浄む
長者 マドより 常に 其の子を見て
子の 愚劣にして 楽って 鄙事を為すを念う
是に長者 弊垢の衣を著
除糞の器を執って 子の所に往到し
方便して附近し 語って勤作せしむ
既に 汝が価を益し 竝に 足に油を塗り
飲食充足し 薦席 厚暖ならしめん
是の如く 苦言すらく 汝 当に勤作すべし
又 以て 軟語すらく 若 我が子の如くせん

長者 智有って 漸く入出せしむ
二十年を経て 家事を 執作せしめ
其れに 金 銀 真珠 頗黎
諸物の出入を示して 皆 知らしむれども
猶 門外に処し 草庵に止宿して
自ら貧事を念う 我に 此の物なしと
父 子の心 漸く已に曠大なるを知って

財物を 与えんと欲して 即ち 親族
国王 大臣 刹利 居士を聚めて
此の大衆に於て説く 是れ 我が子なり
我を捨てて 他行して 五十歳を経たり
子を見てより 来 已に 二十年
昔 某の城に於て 是の子を失いき
周行し 求索して 遂に此に来至せり
凡そ 我が所有の 舎宅 人民
悉く 以て 之に付す 其の所用を恣にすべしと
子 念わく 昔は貧しくして 志意下劣なりき
今は父の所に於て 大に珍宝
竝及に舎宅 一切の財物を獲たりと
甚だ 大に歓喜して 未曾有なることを得るが如く

 

法華経 訓読 朗読