妙法蓮華経 信解品 第四

 

是れを過ぎて已後 心 相 体信して 入出に難りなし 然も其の所止は 猶お本処に在り

世尊 爾の時に 長者 疾有って 自ら将に死せんこと 久しからじと知って 窮子に語って言わく 我 今 多く 金 銀 珍宝有って 倉庫に盈溢せり 其の中の多少 取与すべき所 汝 悉く之を知れ 我が心 是の如し 当に 此の意を体るべし 所以は何ん 今 我と 汝と 便ち 為れ 異らず 宜しく用心を加うべし 漏失せしむることなかれ

爾の時に窮子 即ち 教勅を受けて 衆物の 金 銀 珍宝 及び 諸の庫蔵を領知すれども 而も 一餐をケ取するの意なし 然も 其の所止は 故お本処にあり 下劣の心 亦 未だ捨つること能わず 復 少時を経て 父 子の意漸く已に通泰して 大志を成就し 自ら先の心を 鄙んずと知って

終らんと欲する時に臨んで 其の子に命じ 竝に 親族 国王 大臣 刹利 居士を 会むるに 皆 悉く已に集りぬ 即ち 自ら宣言すらく 諸君 当に知るべし 此れは是れ 我が子なり 我の所生なり 某の城中に於て 吾を捨てて逃走して 伶ビョウ辛苦すること 五十余年 其の本の字は某 我が名は某甲 昔 本城に在って 憂を懐いて推ね覓めき 忽ちに此の間に於て 遇い会うて 之を得たり 此れ実に我が子なり 我 実に其の父なり 今 吾が所有の 一切の財物は 皆 是れ 子の有なり 先に出内する所は 是れ子の所知なり

世尊 是の時に窮子 父の此の言を聞いて 即ち 大に歓喜して 未曾有なることを得て 是の念を作さく 我 本 心にケ求する所 あることなかりき 今 此の 宝蔵 自然にして 至りぬといわんが若し

 

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