妙法蓮華経 譬諭品 第三

若し人と為ることを得ては 諸根 暗鈍にして
ザ陋 レン躄 盲聾 背傴ならん
言説する所あらんに 人 信受せじ
口の気 常に臭く 鬼魅に著せられん
貧窮下賎にして 人に使われ
多病 ショウ痩にして 依怙する所なく
人に親附すと雖も 人 意に在かじ
若し 所得あらば 尋いで復 忘失せん
若し 医道を修して 方に順じて 病を治せば
更に 佗の疾を増し 或は 復死を致さん
若し 自ら病あらば 人の救療することなく
設い 良薬を服すとも 而も 復 増劇せん
若しは 他の反逆し 抄劫し 窃盗せん
是の如き等の罪 横まに 其の殃に羅らん

斯の如き罪人は 永く仏
衆聖の王の 説法教化したもうを 見たてまつらじ

斯の如き罪人は 常に難処に生れ
狂聾心乱にして 永く法を聞かじ
無数劫の 恒河沙の如きに於て
生れては輒ち 聾瘂にして 諸根不具ならん
常に 地獄に処すること 園観に 遊ぶが如く
余の 悪道に在ること 己が舎宅の如く
駝 驢 猪 狗 是れ其の行処ならん
斯の経を 謗ずるが故に 罪を獲ること是の如し

若し 人と為ることを得ては 聾 盲 オン瘂にして
貧窮諸衰 以て 自ら荘厳し
水腫 乾ショウ 疥癩 癰疽
是の如き等の病 以て 衣服と為ん
身 常に臭きに処して 垢穢不浄に
深く我見に著して 瞋恚を増益し
淫欲熾盛にして 禽獣を択ばじ
斯の経を 謗ずるが故に 罪を獲ること是の如し
舎利弗に告ぐ 斯の経を 謗ぜん者
若し其の罪を説かんに 劫を窮むとも尽きじ
是の因縁を以て 我 故に汝に語る
無智の人の中にして 此の経を説くことなかれ

若し 利根にして 智慧明了に
多聞 強識にして 仏道を求むる者あらん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし
若し 人 曾て 億百千の 仏を見たてまつりて
諸の善本を植え 深心堅固ならん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし

若し 人 精進して 常に慈心を修し
身命を 惜まざらんに 乃ち為に説くべし
若し 人 恭敬して 異心あることなく
諸の凡愚を離れて 独 山沢に処せん
是の如きの人に 乃ち 為に説くべし

又 舎利弗 若し 人あって
悪知識を捨てて 善友に 親近するを見ん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし
若し 仏子の 持戒清潔なること
浄明珠の如くにして 大乗経を求むるを見ん
是の如きの人 に乃ち為に説くべし

若し 人 瞋なく 質直柔軟にして
常に 一切を愍み 諸仏を恭敬せん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし
復 仏子 大衆の中に於て
清浄の心を以て 種種の因縁
譬諭 言辞をもって 説法すること 無礙なるあらん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし

若し 比丘の 一切智の為に
四方に法を求めて 合掌し 頂受し
但 楽って 大乗経典を受持して
乃至 余経の一偈をも 受けざるあらん
是の如きの人に 乃ち為に説くべし
人の至心に 仏舎利を求むるが如く
是の如く経を求め 得已って頂受せん
其の人 復 余経を志求せず
亦 未だ曾て 外道の典籍を念ぜじ
是の如きの人に 乃ち為に説くべし

舎利弗に告ぐ 我 是の相にして
仏道を求むる者を説かんに 劫を窮むとも尽きじ
是の如き等の人は 則ち能く信解せん
汝当に 為に 妙法華経を 説くべし

 

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