妙法蓮華経 譬諭品 第三

汝 舎利弗 我 衆生の為に
此の譬喩を以て 一仏乗を説く
汝等 若し能く 是の語を 信受せば
一切 皆 当に 仏道を 成ずることを 得べし
是の乗は 微妙にして 清浄第一なり
諸の世間に於て 為めて 上あることなし
仏の悦可したもう所 一切衆生の
称讃し 供養し 礼拝すべき所なり
無量億千の諸力 解脱
禅定 智慧 及び 仏の余の法あり
是の如き乗を 得せしめて 諸子等をして
日夜 劫数に 常に 遊戲することを得
諸の菩薩 及び 声聞衆と
此の宝乗に乗じて 直に 道場に 至らしむ
是の因縁を以て 十方に 諦かに求むるに
更に余乗なし 仏の方便をば除く

舎利弗に告ぐ 汝 諸人等は
皆 是れ 吾が子なり 我は 則ち是れ父なり
汝等 累劫に 衆苦に焼かる
我 皆 済抜して 三界を 出でしむ
我先に 汝等 滅度すと説くと雖も
但 生死を尽くして 而も実には 滅せず
今 作すべき所は 唯 仏の智慧なり
若し 菩薩あらば 是の衆の中に於て
能く 一心に 諸仏の実法を聴け
諸仏 世尊は 方便を以てしたもうと雖も
所化の衆生は 皆 是れ 菩薩なり
若し 人 小智にして 深く 愛欲に著せる
此れ等を為ての故に 苦諦を説きたもう
衆生 心に喜んで 未曾有なることを得
仏の説きたもう苦諦は 真実にして 異ることなし
若し 衆生あって 苦の本を知らず
深く 苦の因に著して 暫くも 捨つること能わざる
是れ等を為ての故に 方便して 道を説きたもう
諸苦の所因は 貪欲これ本なり
若し 貪欲を滅すれば 依止する所なし
諸苦を滅尽するを 第三の諦と名く
滅諦の為の故に 道を修行す
諸の 苦縛を離るるを 解脱を 得と名く
是の人 何に於てか 而も 解脱を得る
但 虚妄を離るるを 解脱を 為と名く
其れ 実には未だ 一切の解脱を得ず
仏 是の人は 未だ実に 滅度せずと 説きたもう
斯の人 未だ 無上道を 得ざるが故に
我が意にも 滅度に 至らしめたりと 欲わず
我は為れ 法王 法に於て自在なり
衆生を 安穏ならしめんが故に 世に現ず

 

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