妙法蓮華経 譬諭品 第三

爾の時に諸子 父の安坐せるを知って
皆 父の所に詣でて 父に 白して 言さく
願わくは 我等に 三種の宝車を賜え
前に許したもう所の如き 諸子 出で来れ
当に 三車を以て 汝が所欲に随うべしと
今 正しく 是れ時なり 唯 給与を垂れたまえ

長者 大に富んで 庫蔵衆多なり
金 銀 瑠璃 シャコ 碼碯あり
衆の 宝物を以て 諸の 大車を造れり
荘校厳飾し 周ソウして 欄楯あり
四面に鈴を懸け 金縄絞絡して
真珠の羅網 其の上に 張り施し
金華の 諸纓 処処に 垂れ下せり
衆綵雑飾し 周ソウ圍繞せり
柔軟のゾウコウ 以て 茵蓐と為し
上妙の細ジョウ 価直 千億にして
鮮白 浄潔なる 以て其の上を 覆えり
大白牛あり 肥壮多力にして
形体シュ好なり 以て 宝車を駕せり
諸のヒン従多くして 之を 侍衛せり
是の 妙車を以て 等しく 諸子に賜う
諸子 是の時 歓喜踊躍して
是の宝車に乗って 四方に遊び
嬉戲 快楽して 自在無礙ならんが如し

舎利弗に告ぐ 我も 亦 是の如し
衆聖の中の尊 世間の父なり

一切衆生は 皆是れ吾が子なり
深く世楽に著して 慧心あることなし

三界は 安きことなし 猶お 火宅の如し

衆苦 充満して 甚だ 怖畏すべし
常に 生 老 病 死の 憂患あり
是の如き等の火 熾然として息まず

如来は 已に 三界の 火宅を離れて
寂然として 閑居し 林野に 安処せり
今 此の三界は 皆 是れ 我が有なり
其の中の衆生は 悉く 是れ 吾が子なり
而も 今 此の処は 諸の 患難 多し
唯 我 一人のみ 能く 救護を為す

復 教詔すと雖も 而も信受せず
諸の 欲染に於て 貧著深きが故に
是を以て方便して 為に三乗を説き
諸の衆生をして 三界の苦を知らしめ
出世間の道を 開示 演説す
是の諸子等 若し 心 決定しぬれば
三明 及び 六神通を具足し
縁覚 不退の菩薩を 得ることあり

 

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