妙法蓮華経 譬諭品 第三

是の時に宅主 門外に在って 立って
有人の言うを聞く 汝が諸子等
先に遊戲せしに因って 此の宅に来入し
稚小無知にして 歓娯 楽著せり

長者 聞き已って 驚いて 火宅に入る
方に 宜しく 救済して 焼害 なからしむべし
諸子に告諭して 衆の患難を説く
悪鬼 毒虫 災火 蔓莚なり
衆苦次第に 相続して絶えず
毒蛇 ガン 蝮 及び 諸の夜叉
鳩槃荼鬼 野干 狐 狗
チョウ 鷲 鵄 梟 百足の属
飢渇の悩 急にして 甚だ怖畏すべし
此の苦すら 処し難し 況んや 復 大火をや
諸子 知ることなければ 父の誨を聞くと雖も
なお 楽著して 嬉戲すること已まず

是の時に長者 而も 是の念を作さく
諸子 此の如く 我が 愁悩を益す
今此の舎宅は 一の楽むべきなし
而るに 諸子等 嬉戲にタン湎して
我が教を受けず 将に 火に 害せられんとす
即便 思惟して 諸の方便を設けて
諸子等に告ぐ 

我に 種種の珍玩の具 妙宝の好車あり
羊車 鹿車 大牛の車なり
今 門外にあり 汝等 出で来れ
吾 汝等が為に 此の車を 造作せり
意の所楽に随って 以て 遊戲すべし
諸子 此の如き 諸の車を説くを聞いて
即時に 奔競し 馳走して 出で
空地に 到って 諸の苦難を離る

長者 子の 火宅を 出ずることを得て
四衢に住するを見て 師子の座に坐せり
而して 自ら慶んで言わく 我 今 快楽なり
此の諸子等 生育すること 甚だ難し
愚小無知にして 険宅に入れり
諸の毒虫 魑魅 多くして 畏るべし
大火猛焰 四面より 倶に起れり
而るに此の諸子 嬉戲に 貧楽せり
我 已に 之を救うて 難を脱るることを得せしめつ
是の故に 諸人 我 今 快楽なり

 

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