妙法蓮華経 譬諭品 第三

舎利弗 若し衆生あり 内に 智性あって 仏世尊に 従いたてまつりて 法を聞いて 信受し 慇懃に精進して 速かに 三界を 出でんと欲して 自ら涅槃を求むる 是れを 声聞乗と名く 彼の諸子の 羊車を 求むるを為て 火宅を 出ずるが如し 若し 衆生あり 仏世尊に従いたてまつりて 法を聞いて信受し 慇懃に精進して 自然慧を求め 独 善寂を楽い 深く 諸法の因縁を知る 是れを 辟支仏乗と名く 彼の諸子の 鹿車を 求むるを為て 火宅を 出ずるが如し 若し衆生あり 仏世尊に従いたてまつりて 法を聞いて信受し 勤修精進して 一切智 仏智 自然智 無師智 如来の知見 力 無所畏を求め 無量の衆生を 愍念 安楽し 天 人を利益し 一切を度脱する 是れを 大乗と名く 菩薩 此の乗を求むるが故に 名けて 摩訶薩とす 彼の諸子の 牛車を 求むるを為て 火宅を 出ずるが如し

舎利弗 彼の長者の 諸子等の 安穏に 火宅を 出ずることを得て 無畏の処に到るを見て 自ら 財富無量なることを 惟うて 等しく 大車を以て 諸子に賜えるが如く 如来も亦復 是の如し これ 一切衆生の父なり 若し 無量億千の衆生の 仏教の門を以て 三界の苦 怖畏の険道を出でて 涅槃の楽を 得るを見ては 如来 爾の時に 便ち 是の念を作さく 我 無量無辺の智慧 力 無畏等の 諸仏の法蔵あり 是の 諸の衆生は 皆 是れ我が子なり 等しく大乗を 与うべし 人として 独 滅度を得ること あらしめじ 皆 如来の滅度を以て 之を滅度せん 是の諸の 衆生の三界を 脱れたる者には 悉く 諸仏の禅定 解脱等の 娯楽の具を与う 皆 是れ 一相一種にして 聖の称歎したもう所なり 能く 浄妙第一の楽を生ず

舎利弗 彼の長者の 初め三車を以て 諸子を誘引し 然して後に 但 大車の 宝物荘厳し 安穏第一なるを 与うるに 然も 彼の長者 虚妄の咎なきが如く 如来も亦復 是の如し 虚妄あることなし 初め 三乗を説いて 衆生を引導し 然して後に 但 大乗を以て 之を度脱す 何を以ての故に 如来は 無量の智慧 力 無所畏 諸法の蔵あって 能く 一切衆生に 大乗の法を与う 但尽くして 能く受けず 舎利弗 是の 因縁を以て 当に知るべし 諸仏 方便力の故に 一仏乗に於て 分別して 三と説きたもう

 

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