妙法蓮華経 譬諭品 第三

而るに今 乃ち自ら覚りぬ 是れ実の滅度に非ず
若し 作仏することを得ん時は 三十二相を具し
天 人 夜叉衆 龍神等 恭敬せん
是の時 乃ち謂うべし 永く尽滅して余なしと
仏 大衆の中に於て 我当に作仏すべしと説きたもう
是の如き法音を聞きたてまつりて
疑悔 悉く已に除りぬ
初め仏の所説を聞いて 心中 大に驚疑しき
将に魔の仏と作って 我が心を悩乱するに非ずやと
仏 種種の縁 譬諭を以て 巧みに言説したもう
其の心 安きこと 海の如し 我聞いて疑網 断じぬ
仏 説きたまわく 過去世の無量の滅度の仏も
方便の中に安住して 亦皆 是の法を説きたまえり
現在未来の仏 其の数量りあること無きも
亦 諸の方便を以て 是の如き法を演説したもう
今者の世尊の如きも 生じたまいし従り及び出家し
得道し 法輪を転じたもうまで 亦 方便を以て説きたもう
世尊は実道を説きたもう 波旬は此の事無し
是を以て 我定めて知んぬ 是れ魔の仏と作るには非ず
我 疑網に堕するが故に 是れ魔の所為と謂えり
仏の柔軟の音 深遠に甚だ微妙にして
清浄の法を 演暢したもうを聞いて 我が心 大に歓喜し
疑悔 永く已に尽き 実智の中に安住す
我 定めて 当に作仏して 天 人に 敬わるることを為
無上の法輪を転じて 諸の菩薩を教化すべし

爾の時に仏 舎利弗に告げたまわく

吾今 天 人 沙門 婆羅門等の大衆の中に於て説く 我 昔 曾て 二万億の仏の所に於て 無上道の為の故に 常に汝を教化す 汝 亦 長夜に我に随って受学しき 我 方便を以て 汝を引導せしが故に 我が法の中に生ぜり

舎利弗 我 昔 汝をして 仏道を志願せしめき 汝 今 悉く忘れて便ち 自ら已に滅度を得たりと謂えり

我 今 還って汝をして 本願所行の道を 憶念せしめんと欲するが故に 諸の声聞の為に 是の大乗経の 妙法蓮華 教菩薩法 仏所護念と名くるを説く

 

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