妙法蓮華経 方便品 第二

諸仏滅度し已って舎利を供養する者
万億種の塔を起てて金銀及び頗黎
シャコと碼碯マイ瑰瑠璃珠とをもって
清浄に広く厳飾し諸の塔を荘校し
或は石廟を起て栴檀及び沈水
木樒竝に余の材甎瓦泥土等をもってするあり
若しは曠野の中に於て土を積んで仏廟を成し
乃至童子の戲に沙を聚めて仏塔と為る
是の如き諸人等皆已に仏道を成じき

若し人仏の為の故に諸の形像を建立し
刻彫して衆相を成せる皆已に仏道を成じき

或は七宝を以て成し鍮鉐赤白銅
白鑞及び鉛錫鉄木及与泥
或は膠漆布を以て厳飾して仏像を作れる
是の如き諸人等皆已に仏道を成じき

綵画して仏像の百福荘厳の相を作すこと
自らも作し若しは人をしてもせる
皆已に仏道を成じき

乃至童子の戲に若しは艸木及び筆
或は指の爪甲を以て画いて仏像を作せる
是の如き諸人等漸漸に功徳を積み
大悲心を具足して皆已に仏道を成じて
但諸の菩薩を化し無量の衆を度脱しき

若し人塔廟宝像及び画像において
華香旛蓋を以て敬心にして供養し
若しは人をして楽を作さしめ鼓を撃ち角貝を吹き
簫笛琴箜篌琵琶鐃銅バツ
是の如き衆の妙音尽く持って以て供養し
或は歓喜の心を以て歌唄して仏徳を頌し
乃至一小音をもってせし皆已に仏道を成じき

若し人散乱の心に乃至一華を以て
画像に供養せし漸く無数の仏を見たてまつりき
或は人あって礼拝し或は復但合掌し
乃至一手を挙げ或は復少し頭を低れて
此れを以て像に供養せし
漸く無量の仏を見たてまつり
自ら無上道を成じて広く無数の衆を度し
無余涅槃に入ること
薪尽きて火の滅ゆるが如くなりき

若し人の散乱の心に塔廟の中に入って
一たび南無仏と称せし皆已に仏道を成じき

諸の過去の仏の現在或は滅後に於て
若し是の法を聞くこと有りし皆已に仏道を成じき

未来の諸の世尊其の数量あることなけん
是の諸の如来等も亦方便して法を説きたまわん
一切の諸の如来無量の方便を以て

諸の衆生を度脱して仏の無漏智に入れたまわん
若し法を聞くことあらん者は
一りとして成仏せずということなけん

諸仏の本誓願は我が所行の仏道を
普く衆生をして
亦同じく此の道を得せしめんと欲す

未来世の諸仏百千億
無数の諸の法門を説きたもうと雖も
其れ実には一乗の為なり
諸仏両足尊法は常に無性なり
仏種は縁に従って起ると知しめす
是の故に一乗を説きたまわん

是の法は法位に住して世間の相常住なり
道場に於て知しめし已って導師方便して説きたまわん

天人の供養したてまつる所の現在十方の仏
其の数恒沙の如く世間に出現したもうも
衆生を安穏ならしめんが故に
亦是の如き法を説きたもう

第一の寂滅を知しめして方便力を以ての故に
種種の道を示すと雖も其れ実には仏乗の為なり

衆生の諸行深心の所念
過去所習の業欲性精進力
及び諸根の利鈍を知しめして種々の因縁
譬諭亦言辞を以て応に随って方便して説きたもう

今我も亦是の如し衆生を安穏ならしめんが故に
種種の法門を以て仏道を宣示す
我智慧力を以て衆生の性欲を知って
方便して諸法を説いて皆歓喜することを得せしむ

舎利弗当に知るべし我仏眼を以て観じて
六道の衆生を見るに貧窮にして福慧なし
生死の険道に入って相続して苦断えず
深く五欲に著することミョウ牛の尾を愛するが如し
貪愛を以て自ら蔽い盲瞑にして見る所なし
大勢の仏及び断苦の法を求めず
深く諸の邪見に入って苦を以て苦を捨てんと欲す
是の衆生の為の故に而も大悲心を起しき

 

法華経 訓読 朗読