妙法蓮華経 方便品 第二

若し我衆生に遇えば尽く教うるに仏道を以てす
無智の者は錯乱し迷惑して教を受けず
我知んぬ此の衆生は未だ曾て善本を修せず
堅く五欲に著して痴愛の故に悩を生ず
諸欲の因縁を以て三悪道に墜堕し
六趣の中に輪廻して備さに諸の苦毒を受く
受胎の微形世世に常に増長し
薄徳少福の人として衆苦に逼迫せらる
邪見の稠林若しは有若しは無等に入り
此の諸見に依止して六十二を具足す
深く虚妄の法に著して堅く受けて捨つべからず
我慢にして自ら矜高し諂曲にして心不実なり
千万億劫に於て仏の名字を聞かず
亦正法を聞かず是の如き人は度し難し

是の故に舎利弗我為に方便を設けて
諸の尽苦の道を説き之に示すに涅槃を以てす
我涅槃を説くと雖も是れ亦真の滅に非ず
諸法は本より来常に自ら寂滅の相なり
仏子道を行じ已って来世に作仏することを得ん
我方便力あって三乗の法を開示す
一切の諸の世尊も皆一乗の道を説きたもう
今此の諸の大衆皆疑惑を除くべし
諸仏は語異ることなし唯一にして二乗なし

過去無数劫の無量の滅度の仏
百千万億種にして其の数量るべからず
是の如き諸の世尊も種々の縁譬諭
無数の方便力をもって諸法の相を演説したまいき

是の諸の世尊等も皆一乗の法を説き
無量の衆生を化して仏道に入らしめたまいき

又諸の大聖主一切世間の
天人群生類深心の所欲を知しめして
更に異の方便を以て第一義を助顕したまいき

若し衆生類あって
諸の過去の仏に値いたてまつって
若しは法を聞いて布施し或は持戒忍辱
精進禅智等種種に福徳を修せし
是の如き諸人等皆已に仏道を成じき

諸仏滅度し已って若し人善軟の心ありし
是の如き諸の衆生皆已に仏道を成じき

 

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