妙法蓮華経 序品 第一

爾の時に四部の衆日月燈仏の
大神通力を現じたもうを見て其の心皆歓喜して
各各に自ら相問わく是の事何の因縁ぞ
天人所奉の尊適めて三昧より起ち
妙光菩薩を讃めたまわく汝は為れ世間の眼
一切に帰信せられて能く法蔵を奉持す
我が所説の法の如き唯汝のみ能く証知せり
世尊既に讃歎し妙光をして歓喜せしめて

是の法華経を説きたもう六十小劫を満てて
此の座を起ちたまわず説きたもう所の上妙の法
是の妙光法師悉く皆能く受持す

仏是の法華を説き衆をして歓喜せしめ已って
尋いで即ち是の日に於て天人衆に告げたまわく
諸法実相の義已に汝等が為に説きつ
我今中夜に於て当に涅槃に入るべし
汝一心に精進し当に放逸を離るべし
諸仏には甚だ値いたてまつり難し
億劫に時に一び遇いたてまつる
世尊の諸子等仏涅槃に入りたまわんと聞いて
各各に悲悩を懐く仏滅したもうこと一と何ぞ速かなる
聖主法の王無量の衆を安慰したまわく
我若し滅度しなん時汝等憂怖すること勿れ

是の徳蔵菩薩無漏実相に於て
心已に通達することを得たり其れ次に当に作仏すべし
号を曰って浄身と為けん亦無量の衆を度せん

仏此の夜滅度したもうこと薪尽きて火の滅ゆるが如し
諸の舎利を分布して無量の塔を起つ
比丘比丘尼其の数恒沙の如し
倍復精進を加えて以て無上道を求む
是の妙光法師仏の法蔵を奉持して
八十小劫に中に広く法華経を宣ぶ
是の諸の八王子妙光に開化せられて
無上道に堅固にして当に無数の仏を見たてまつるべし
諸仏を供養し已って随順して大道を行じ
相継いで成仏することを得転次して授記す
最後の天中天をば号を燃燈仏という
諸仙の導師として無量の衆を度脱したもう
是の妙光法師時に一りの弟子あり
心常に懈怠を懐いて名利に貧著せり
名利を求むるに厭くこと無くして多く族姓の家に遊び
習誦する所を棄捨し廃忘して通利せず
是の因縁を以ての故に之を号けて求名と為す
亦衆の善業を行じ
無数の仏を見たてまつることを得
諸仏を供養し随順して大道を行じ
六波羅蜜を具して今釈師子を見たてまつる
其れ後に当に作仏すべし号を名けて弥勒といわん
広く諸の衆生を度すること
其の数量有ることなけん
彼の仏の滅度の後懈怠なりし者は汝是れなり
妙光法師は今則ち我が身是れなり

我燈明仏を見たてまつりしに本の光瑞此の如し
是れを以て知んぬ今の仏も
法華経を説かんと欲するならん
今の相本の瑞の如し是れ諸仏の方便なり
今の仏の光明を放ちたもうも
実相の義を助発せんとなり
諸人今当に知るべし
合掌して一心に待ちたてまつれ
仏当に法雨を雨らして
道を求むる者に充足したもうべし
諸の三乗を求むる人若し疑悔有らば
仏当に為に除断して
尽くして余りあることなからしめたもうべし

 

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