妙法蓮華経 序品 第一

爾の時に如来 眉間白毫相の光を放って 東方 万八千の仏土を照したもうに 周遍せざることなし 今見る所の是の諸の仏土の如し 弥勒当に知るべし

爾の時に会中に 二十億の菩薩あって 法を聴かんと楽欲す 是の諸の菩薩 此の光明普く仏土を照すを見て 未曾有なることを得て 此の光の 所為因縁を知らんと欲す

時に菩薩あり 名を妙光という 八百の弟子あり

是の時に日月燈明仏 三昧より起って 妙光菩薩に因せて 大乗経の妙法蓮華 教菩薩法 仏所護念と名くるを説きたもう

六十小劫 座を起ちたまわず 時の会の聴者も亦一処に坐して 六十小劫 身心動ぜず 仏の所説を聴くこと 食頃の如しと謂えり 是の時に衆中に 一人の若しは身 若しは心に 懈倦を生ずるあることなかりき

日月燈明仏 六十小劫に於て 是の経を説き已って 即ち 梵 魔 沙門 婆羅門 及び 天 人 阿修羅衆の中に於て 此の言を宣べたまわく 如来今日の中夜に於て 当に無余涅槃に入るべし

時に菩薩あり 名を徳蔵という 日月燈明仏 即ち其れに記を授け 諸の比丘に告げたまわく 是の 徳蔵菩薩 次に当に作仏すべし 号を 浄身多陀阿伽度 阿羅訶 三藐三仏陀といわん

仏 授記し已って 便ち中夜に於て 無余涅槃に入りたもう 仏の滅度の後 妙光菩薩 妙法蓮華経を持ち 八十小劫を満てて 人の為に演説す 日月燈明仏の八子 皆妙光を師とす 妙光教化して 其れをして 阿耨多羅三藐三菩提に 堅固ならしむ 是の諸の王子 無量百千万億の仏を 供養し已って 皆仏道を成ず 其の最後に 成仏したもう者 名を 然燈という 八百の弟子の中に一人あり 号を 求名という 利養に貧著せり 復 衆経を読誦すと雖も 而も通利せず 忘失する所多し 故に求名と号く 是の人 亦 諸の善根を種えたる 因縁を以ての故に 無量百千万億の諸仏に 値いたてまつることを得て 供養 恭敬 尊重 讃歎せり 弥勒 当に知るべし 爾の時の妙光菩薩は 豈に異人ならん乎 我が身 是れ也 求名菩薩は 汝が身 是れなり 今 此の瑞を見るに 本と異ることなし 是の故に惟忖するに 今日の如来も 当に 大乗経の 妙法蓮華 教菩薩法 仏所護念と名くるを 説きたもうべし

 

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