妙法蓮華経 序品 第一

爾の時に文殊師利 弥勒菩薩摩訶薩 及び諸の大士に語らく 善男子等 我が惟忖するが如き 今仏世尊 大法を説き 大法の雨を雨らし 大法の螺を吹き 大法の鼓を撃ち 大法の義を演べんと 欲するならん

諸の善男子 我過去の諸仏に於て 曾て此の瑞を見たてまつりしに 斯の光を放ち已って 即ち大法を説きたまいき 是の故に当に知るべし 今仏の光を現じたもうも 亦復是の如く 衆生をして咸く一切世間の 難信の法を聞知することを 得せしめんと欲するが故に 斯の瑞を現じたもうならん

諸の善男子 過去無量無辺不可思議 阿僧祇劫の如き 爾の時に仏います 日月燈明如来 応供 正遍知 明行足 善逝 世間解 無上士 調御丈夫 天人師 仏 世尊と号く 正法を演説したもう 初善 中善 後善なり 其の義深遠に 其の語巧妙に 純一無雑にして 具足清白梵行の相なり 声聞を求むる者の為には 応ぜる 四諦の法を説いて 生老病死を度し 涅槃を究竟せしめ 辟支仏を求むる者の為には 応ぜる 十二因縁の法を説き 諸の菩薩の為には 応ぜる 六波羅蜜を説いて 阿耨多羅三藐三菩提を得 一切種智を成ぜしめたもう

次に復仏います 亦日月燈明と名く 次に復仏います 亦日月燈明と名く 是の如く二万仏 皆同じく一字にして 日月燈明と号く 又同じく一姓にして 頗羅堕を姓とせり 弥勒当に知るべし 初仏 後仏 皆同じく一字にして 日月燈明と名け 十号具足したまえり 説きたもう所の法 初 中 後善なり

其の最後の仏 未だ出家したまわざりし時 八王子あり 一を有意と名け 二を善意と名け 三を無量意と名け 四を宝意と名け 五を増意と名け 六を除疑意と名け 七を響意と名け 八を法意と名く 是の八王子 威徳自在にして 各四天下を領す 是の諸の王子 父出家して 阿耨多羅三藐三菩提を 得たもうと聞いて 悉く王位を捨て 亦随い出家して 大乗の意を発し常に梵行を修して 皆法師と為れり 已に千万の仏の所に於て 諸の善本を植えたり

是の時に 日月燈明仏 大乗経の 無量義 教菩薩法 仏所護念と 名くるを説きたもう 是の経を説き已って 即ち大衆の中に於て 結跏趺坐し 無量義処三昧に入って 身心動じたまわず 是の時に天より曼陀羅華 摩訶曼陀羅華 曼殊沙華 摩訶曼殊沙華を雨らして 仏の上及び諸の大衆に散じ 普仏世界六種に震動す 爾の時に会中の比丘 比丘尼 優婆塞 優婆夷 天龍 夜叉 乾闥婆 阿修羅 迦楼羅 緊那羅 摩ゴ羅伽 人 非人 及び諸の小王 転輪聖王等 是の諸の大衆 未曾有なることを得て 歓喜し合掌して 一心に仏を観たてまつる

 

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